机上の空論主義者

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NAISTを修了しての振り返りと、NAISTでの活動の特徴考察

こんにちは。
恐ろしいことに、明日から社会人です。なんか頑張ります。

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霧立ちこめしNAIST刑務所

そう、私の大学院生活ももう終了(修了)しました。2年間、奈良先端科学技術大学院大学で生活をしていたわけですが、ただ目の前のタスクを片づけていたら終わってしまったという印象です。博士前期課程の学生なんて皆同様に、ただ「忙しかった」と結論付けられるでしょうけど。ただ感想を述べるだけではつまらないので、自身のNAISTでの生活を振り返りつつ、活動の印象についてまとめていけたらと思います。




そもそもどんな大学院生活を送ったか

まず、修士2年間でどのような生活を送ったかをまとめていきます。大したことを書いていないので、時間が無い人は本章を読み飛ばして下さい ;)

修士1年 前半

M1前半は、授業・修士研究テーマ決め・学部時代の論文執筆・就職活動をする必要がありました。活動量が一番多く、肉体的に疲れたのはこの時期だと思います。

NAISTに入って最初に待ち受けているのは、当然のごとく授業です。NAISTでは英語で授業が進められ、その内容は学部時代に情報系学科の成績上位だった私にとっても難しいものでした。さらに、M1前半にすべての授業単位を取得することができ、それに挑戦した私は課題の多さに睡眠を削ることになります。特に、コロナ禍の始まりに入学したため、授業の出席点や筆記テストは1つもなく、課題の提出により成績評価されたため、その量は例年とは比べ物になりません。

学部4年の半年近くを利用して大学院受験し、研究室を変えているため研究活動を疎かにすると「苦労してNAISTまで入学した意味があったのか?」という疑問に苛まれることになります。これは大学院2年間を通して常に付きまとう問題でした。ともかく、1年目は研究テーマを確立・安定化して、同期よりも少しでも進めたいという思いがありました。そのため、研究テーマ決めや論文調査にも力を入れて、常に気を張っていなければなりません。アイデア出しが好きな私には、この時間は苦しくもなんともなかったのですが、それらに慣れていない同期は大変苦労していたことを覚えています。

上記2つの研究活動に加え、同時並行して学部時代の研究論文を3本も執筆していました。これは大学院受験の影響で卒業研究が後ろ倒しになったこと、単純に自分自身で論文を書き上げたかったこと、また、技術雑誌からの寄稿依頼という名誉なことだったために取り組みました。卒論の短縮 + 作業分担などはしていたため、死ぬことは無かったのですが、NAISTでの活動に追加して好きでやっていたことなので、忙しくても文句は言えず歯を食いしばりながら堪え抜いたことが記憶に残っています。

最後の就職活動ですが、上記のことがある中で時間を費やせなかったことは想像に難しくないでしょう。私は就活として逆求人イベントへの参加と、5社程度のインターンシップへ応募したことくらいで終了しました。幸いながら、学部時代からの成果が認められて書類選考には優位に働き、人より苦労は少なかったです。無事にソフトバンクの4週間の現地インターンに通過し、コロナで中止になり、どこのインターンシップにも参加しない人になりました。


修士1年 後半

M1後半は、修士研究と研究テーマ変更・就職活動・個人開発をしていました。個人開発が出てきたということで、少し余裕が出てきたわけですね。しかし、修士2年間を通して、最も精神的に疲弊した時期でした。

修士研究は、遠回り遠回りしながら実装を進めていました。1つひとつ自力での実装することをこだわっていたため、研究には本質的に重要ではない箇所に時間をかけて、先生に「要らぬ」と言われ、途中まで作りかけたものを幾度も手放していました。挙句、研究テーマと同じような実装をしているアプリケーションを見つけてしまい、研究テーマを1から再検討した次第です。結果、M1の研究は、力を入れて活動していたものの、無に帰したのでした。あるある。

研究テーマが無に帰して精神的に参っている中、病みイベントと名高い就職活動も進めなければなりません。私はソフトバンクの早期選考を最終面接で落とされ、6社のお祈りメールを乗り越えて、7社目でようやく内定を頂きました。書類選考にはすべて通っていたので、面接で落とされすぎて自分自身のコミュ力や経歴を疑いましたね。開発歴などに強烈な自身があったため、絶対に嘘をつかない方針を貫いていました。しかし、SPI試験を複数人で不正しながら問いたり、嘘をつきながら内定をもらう人を見ながら、何が正しいか疑い悩み病んでいました。

個人開発はFFKBであったり、webサービスも実装したり、新しい基板の設計もこの時期にしていました。なんだかんだ余裕があったと言えます。研究活動でくすぶっていた分、その他では活躍しようと意地でも働いていたのでしょうか。

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修士2年 前半

M2前半は、修士研究・学会発表準備・個人開発・ブログ1か月連投チャレンジ・親知らず3本同時抜歯などをしていました。

M2前半では、研究活動が軌道に乗ってきたこともあり、そちらの被験者実験を主軸にバリバリと実装を進められました。投稿する学会と被験者実験内容が決まっただけで、ずいぶん事を運びやすくなるものです。活動しやすさから、肉体的にも精神的にも余裕がありました。実験もしていない状態で、論文執筆を無理な締め切りで応募しても、無理をすれば何とかなる。

研究は軌道に乗っていましたので、就職したらできないことをを今年度中に挑戦しようと、ブログ1か月連投チャレンジと抜歯(全身麻酔のため1週間入院)をしていました。本ブログは一応、技術ブログですので、1か月連投しようと思うと必然的に個人開発や専門知識獲得をすることになり、躍進の1か月も過ごしたとも言えます。ただ、記事連投チャレンジ中に祖母が亡くなり、不慣れなイベントが続いたりスケジュールが狂ったりと、ブログを書く意欲をここで無くしてしまいました…
ともかく、研究も個人開発も進められ、文武両道?できた期間でした。

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修士2年 後半

M2後半は、修士研究・個人開発・次年度準備をしていました。普通に、当然のごとく忙しかったです。

国内学会後に様々なやる気を失ってダラダラ生活していたら、いつの間にか研究活動がマズい状態に突入しました。その上、次にどんな被験者実験をすれば良いかは私の研究において最大の難題であり、修論をどうまとめ上げるかを含めて検討しなければなりませんでした。その後は実験設計を短期間で行い、実験用システムの実装をほぼバグが無い状態に仕上げることに注力。さらに、被験者実験を採用したことで大量の被験者実験をし、期間も2週間以内で密にタスクをこなしました。そして取得データの分析と修論執筆、修論発表を着々と進める日々。。。いつの間にか、M2後半が終わっていました。

実験データを集めたりデータ分析を進めると同時に、忙しさを忘れて気まぐれで応募したQiita Advent Calendarの記事を書き上げるために四苦八苦しました(なぜ4記事も応募してしまったんだ…)。各ネタもないのに、自分で計画を忙しくして馬鹿の極みです。 ume-boshi.hatenablog.jp ume-boshi.hatenablog.jp

修論発表が終わってからは、すぐに内定先の手続き・引越し準備・実家の部屋を引き払い・車の売却・研究の引継ぎと、大忙しの日々を過ごしました。


つまりどんな生活だったか

振り返ってみると、他大学院進学後に遊び惚けることは困難でした。

  • M1前半は、肉体的疲労が強く、人によっては環境変化で病む人も出てくるでしょう。
  • M1後半は、精神的疲労が強く、時間的な余裕が少しだけできます。
  • M2前半は、研究テーマさえ確立されていれば、肉体・精神・時間的に余裕があります。色々ガッツリ進められるでしょう。
  • M2後半は、時間的余裕が無くなり、研究活動に肉体的・精神的にも披露する期間といえるでしょう。どれだけコツコツ進められる人でも等しく忙しいと思います。

自身の研究内容は、まとまった結果が出るまで学会発表がしづらく、どうも研究で満足できる発表成果は残せませんでした。その分、娯楽として個人開発にも力を入れたとも言えます。もし、国際学会やジャーナルへの投稿を目標として研究活動をより真面目に行うのであれば、休んでいる暇はほとんどなく、QoLも極めて低下していたでしょう。




他大学院進学の印象

これまで、個人的にNAISTでの活動を振り返り、その特徴について述べてきましたが、一個人の生活内容には需要が無いと思います(なぜ書いた)。

なのでもう少し一般的な目線で、NAISTでの活動の特徴や印象をまとめていこうと思います。

研究スケジュールについて

〇 モチベーションが高い人が多いため、常に若干焦りながら活動可能

様々な大学からの優秀近い学生がNAISTには集まってきているようで、研究活動を真面目に行っている人は当然多いです。全員が大学院受験していることからも、当たり前の態度だとわかりますね。さらに技術的に優れた人が多く、モチベーションと相まって定期的にちゃんと進捗を出してきます。私が焦って負けじと研究を進めようと思っても、隣の芝生は青く見えるようで、周りも焦って研究を加速していきます。

同期だけでなく、先輩も後輩もすごい人ばかりなので、焦りを抱き続けるのは簡単です。まともな人であれば、この環境では自然と研究成果が生まれてくるでしょう。

〇 研究時間のやりくりが容易

研究室にも依りますが、情報系ではコアタイムが無い研究室が多い印象です。私は完全に昼夜転回型の生活習慣でしたが、深夜に大学に行っても誰か居たり、深夜に大学から帰るときには大量の研究室で電気がついているのが見えます。これは、徹夜するほど忙しいのではなく、スケジュール的に自由が利く研究室が多い証拠でもあると思います。

私が個人開発やブログ1か月連投チャレンジをしたり、適当な時期に入院できたりしたので、やる気に波がある人でも長期的には上手く活動できる環境です。

〇 学内でのバイトが多くあり小遣い稼ぎ可能

学内バイトは他大学でもあるでしょうが、NAISTではその頻度が多いと思われます。というのも、よくある授業TAやRA(Research Assistant)、共同研究の補助に加えて、サマー/スプリングセミナーやインターンシップでバイト代がもらえます。これは、NAISTに入学する前の学生さんが、研究室に仮配属して雰囲気や研究対象などを知れる仕組みなのですが、長いときには1か月くらい来訪があるのです。また、オープンキャンパスや学外イベント補助などの活動でもバイト代がもらえたりします。

がっつりバイトできない環境下では、こういった小遣い稼ぎはありがたいものです。

× 授業課題の多さや就活の必要性から、研究時間が少ない

一般的に、他大学院への進学をすると授業課題については、どれだけ努力すれば単位が取れるかの基準が変わるため手抜きできない上に、院進≒上位の学歴 であることで、課題の難易度や量が増えるでしょう。就職活動では、進学後の研究テーマや成果が安定していない中で、他の研究が変わっていない学生たちと戦わなければなりません。まとまった研究成果を就職活動でアピールしづらい傾向があり、開発経験が深く豊富に無い人は就職活動で苦労すること間違いなしです。

わざわざNAISTに進学したくせに、研究活動に時間を費やしきれないのは無意味で致命的な問題です。修士卒で就職するのであれば、研究活動に満足な時間をかけられない可能性があることを必ず覚悟しましょう。

× テーマ決めが遅いと、残せる研究成果が小規模化

大学院受験して専門分野をずらすということから、新しく修論研究テーマを検討するための知識量が不足し、右往左往しがちです。私の同期は、M1のときに決めた研究内容が、修論内容に直結していたのは8人中3人だけでした。研究テーマの決定が遅れれば研究期間が短くなり、成果も小規模化します。自分で研究内容を決めない場合はもっと安定して進められますが、それはそれで面白くない。




生活の印象について

〇 娯楽が研究寄りになり、成果としても消化可能

NAISTの研究は、専門外の分野を傍から見ても面白いです。研究内容を派生して、色々試しているだけでも楽しいですし、研究チックにも変えられます。個人開発が好きな人であれば、自身の専門性と研究室の専門性を少し絡めるだけでも、自然と娯楽が研究化可能です。実際、私が趣味で作ったFFKBや群ロボットは、やる気が持続して入ればHCIやロボティクスの分野で研究化しようと思っていました。この ↓ 記事の内容も、修論研究のちょっとした派生です。

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分野に依るのかもしれませんが、一応 "先端" 的な技術から派生させるので、少ない苦労で新しい研究が生まれやすいのでしょうかね。

〇 金銭感覚がバグるほどの研究費

NAISTの研究費利用の審査がザルなのか、新しい機器をバンバン購入してくれます。1台100万円近いデバイスを突然4台買ったり、45万円くらいの某ARグラスを学生1人ずつに行き渡るように大量に保持していたり、謎に光熱費がかかりまくる施設で1人が研究するためだけに毎月数十万支払ったりと、とてつもない懐の広さを目の当たりにしてきました。ちなみに、世代によっては、大学からMacBook Airが貸与されたりもしました。
今年度に限っては、研究室の環境改善費用として各研究室に200万円が支給され、空気清浄機やyogiboや昇降机などが大量導入されたりしました。

先端恐怖症になってもおかしくない。

〇 国際交流した意欲が湧く

NAISTは外国籍の留学生が多く、日本人:留学生=7:3くらいの比率でいます。単純に言語が違うだけならいいですが、多言語を扱える人がほとんどで、技術水準も高く、休みなく永久に研究を続けています。比較的、中国国籍の方が多いのですが、必ずと言っていいほど英語か日本語を話せて、そのどちらかでミーティングに参加できるほどです。その人たちが寮生活していることも相まって、日本で時々観光する以外は毎日研究室に来て活動しているのです。これは日本の大学で日本人よりも留学生の方が成果を残しうるという恐ろしい現象を生んでいる気がします。

ともかく、留学生の水準が高さに感化されて努力しなければと思うとともに、文化交流を図りたいなぁと意欲が湧いたものです。コミュ障なのであまり話せませんでしたが…

× 娯楽施設が少なく交通の便が悪く、研究と娯楽のメリハリが付けづらい

娯楽と言えば、カラオケとかボーリング場、ラウワンとかを想像するかもしれないですが、そもそもまともに外食できる場が徒歩圏内にありません。大学の学食は、自称グルメの同期からはマズいと評されており、外食先は決まって車で10分ほどのラーメン程度です。外食するためには、誰か車所持者が犠牲となって研究活動を止めて運転手になる必要があります(まじウザかった)。運転手のスケジュールと気分が合わなければ、外食の話も当然無しになります。
その結果、最終的に行き着く先は、事前にお弁当を買っておいてそれを研究室で食べるスタイルです。これでは研究と娯楽のメリハリもへったくれもありません。

個人的には、NAISTの学食で売っている幕の内弁当はおいしいのですが、舌が肥えた人には耐えられないのでしょうね。




まとめ

さて、ここまで長々と語ってきましたが、NAISTは研究組織として優れていることが伝われば幸いです。ただしその長所も、日本の就活システムと2年間という時間的制限、精神的負荷などの問題で、うまく活用しきれないことがあることも知らなければなりません。

これからNAISTや他大学院進学を検討する方は、就職活動や研究速度、自身の趣味などのどこに重点を置くかを綿密に想像しておきましょう。苦労して大学院進学したのに、何も為せない無駄な期間とならないことを願っています。



それでは。

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NAISTよ、なんだかんだ楽しかったぞ。ありがとう。